大宇陀の又兵衛(またべえ)桜 ※瀧桜 | フローリング総合研究所
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2019.03.01

大宇陀の又兵衛(またべえ)桜 ※瀧桜

奈良県宇陀市はその昔、「阿騎野(あきの)」と呼ばれる宮廷の狩場であった。柿本人麻呂による万葉集の歌「ひむがしの野にかぎろひの立つみえてかへりみすれば月かたぶきぬ」は、この地を訪れたときに詠まれたものである。
1615(慶長20)年に大坂夏の陣で豊臣側が敗れると、武将であった後藤又兵衛がここへ逃れ住んだ。後藤家の屋敷跡とされる場所に、彼が愛育したと伝えられる「又兵衛桜」は立っている。
大樹は石垣から身を乗り出すような姿勢で、3本の大枝を天に広げていた。無数の花をつけた枝は地面近くまで長く垂れており、「瀧桜」の異名があるのもよくわかる。木の下に立って見上げると、空は薄紅色で覆われていた。紅の優しい雰囲気をあたり一面に漂わせ、周りに植栽されたモモやコブシと春の調べを共演しているようである。
かつてはひなびた田園風景のなかに佇んでいた又兵衛桜だが、周辺が整備されたことによってすっかり観光名所となり、開花シーズンには人と車で混み合う。しかし、花の香りは今も昔も変わらない。

指定:奈良県保護樹木
所在地:奈良県宇陀市大宇陀本郷
樹種:シダレザクラ
樹齢:推定300年
樹高:13m
幹周:3m
撮影:2007年
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