長太(なご)の大楠 | フローリング総合研究所
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2021.03.12

長太(なご)の大楠

三重県鈴鹿市にある「長太(なご)の大楠」は、クスの巨木には珍しくすらりとしたスタイルが特徴である。平地の巨樹は樹高が低く、防風林のような鎮守の森に鎮座している場合が多いが、長太の大楠は広く開けた田園地帯の只中に大枝を広げて堂々と立っていた。小高い丘の上にあることもあり、遠くからもよく見えるランドマークの役割を一樹で果たしている。

見事な立ち姿を写真に収めるには最高のアングルだが、周囲に何もないだけに風当たりは強い。1,000年という長い樹齢を重ねる間、暴風や雷といった災害に幾度も見舞われたであろうことは想像に難くないが、地元の人々の手入れと介添えによって美しい樹形を保っている。1959年の伊勢湾台風では、さすがに南側の大枝が破損したそうだ。

19世紀中頃に書かれた『勢国見聞集』には「河曲郡北堀江村 楠 当村の西の方にあり 是を大木神社と云 式内の社なり」とあり、この木そのものが神社として祀られていたらしいことがわかる。明治時代に近在の神社に合祀されたと伝えられているが、今も根元に賽銭箱が置かれていたので、「よくぞここまで長生きができたもの」という感謝を込めて、ささやかながら寄進をしてきた。

指定:県指定天然記念物
所在地:三重県鈴鹿市南長太町285
樹種:クスノキ
樹齢:推定1,000年
樹高:23m
幹周:8.2m
撮影:2008年
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