ミラノデザインウィーク2024 レポート
世界中のインテリアや建築のプロフェッショナルから注目を集める、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」。62回目の開催を迎えた今年は、出展企業数1950(サローネサテリテのデザイナーを含む)、来場者数はコロナ前に迫る37万824人(前年比20.2%増)と非常に活気に溢れていました。また、同時期にミラノ市内で開催されるデザインイベント「フォーリサローネ」も、市内各地で600を超えるイベントが開催されており多くの人で賑わっていました。
ミラノサローネの今年のコンセプトは「Where Design Evolves(デザインが進化する場所)」。来場者が疲れにくい会場レイアウトの見直しや、サスティナビリティ・ポリシーの進化等が実施されていました。再利用不可能な材料の使用が禁止されるなど、持続可能な見本市を目指して厳しい基準が設けられており、廃材料から生み出した新素材を使った製品が所々で展示される等、ヨーロッパではサスティナブルへの取り組みが当たり前になりつつある時代の流れを感じられます。展示されている家具も、「自然」に近い色合いや塗装仕上げが多いことが印象的でした。また今年の隔年見本市は「ユーロクッチーナ」の年。たくさんのキッチンブランドが展示を行っており、天然木カウンターとキッチンの組み合わせ等も多数見られました。
今年印象に残ったベスト3
インテリアトレンドを牽引するフィエラ会場の展示では、ヨーロッパの先進的な技術を活かした家具の仕上げも多く見られました。ここでは特に印象的だった展示を3つご紹介します。
FLEXFORM
展示ブースすべてを真っ白なカーテンで囲ったデザインが印象的で、日本でも人気の明るく穏やかな空間が素敵でした。展示家具の木材は、まるで無塗装かと思うような仕上げで、自然の状態の木に近いやさしい風合いでした。
Poliform
随所に空間を引き締めるブラックが使われていたPoliform。ブース内の木材の多くは黒く着色された「エルム(ニレ)」で揃えられていました。定番オークの需要が急増する中、それ以外の樹種を使用していく意志を感じました。
KARIMOKU
今年は合計4ヶ所で展示を行っていたKARIMOKUは、日本の樹の美しさを表現していました。中でも印象に残ったのが「ケヤキ」。和室の減少や生活様式の変化から需要が縮小するケヤキを、現代に合うデザインに生まれ変わらせた家具づくりが素晴らしかったです。
インテリアカラートレンド
アースカラーを中心にした低彩度カラーが継続。
ブラックの占める面積が増加。
ベースカラーにホワイト、ベージュ、ブラウンといった彩度の低いアースカラーを使いブラックを効果的に配色するコーディネートが多くみられました。ブラックの占める面積が増加傾向にあり、ブラック着色の家具は各メーカに必ず1つは展示されているのではと思うほど多く見られました。また、ブラックフローリングを展示に採用しているメーカーも非常に多く見られました。穏やかなアースカラーのグラデーションで構成された空間から、ブラックとのコントラストがついた空間まで、ブラックの使い方に各メーカーの個性が出ていたように感じます。差し色にはテラコッタ色やグリーン等が多く使われていました。
ウッディトレンド
人気樹種は「ウォルナット」と「オーク」。
ブラック着色やインビジブルな仕上げが増加。
今年多かったのは「ウォルナット」と「アッシュ」。今まで慣れ親しんだ濃いウォルナットとは違う、明るく柔らかな色合いのウォルナットが多く見られました。またアッシュをはじめオークやエルム等の環孔材も多く、「ブラック着色」に仕上げられた家具が多く見られました。さらに今年多かったのが「インビジブル仕上げ」。インビジブルとは「目に見えない」「表に出てこない」等の意味。塗料が見えず、まるで無塗装のような柔らかな色合いの仕上げのことです。ウォルナット・アッシュ・オーク・チェリー等、多彩な樹種でインビジブルの表現が見られました。
|柔らかな色合いのウォルナット
|ブラック着色仕上げ
|インビジブル(無塗装感)仕上げ
全体的に、アースカラーを中心とした彩度の低いカラーコーディネートが多く見られた今年のミラノサローネ。家具に使われる木材も、インビジブル(無塗装感)仕上げ等、より自然の状態に近い、木のあたたかみを感じられる表現が多く見られました。一方で、空間にアクセントを与えるブラックの面積も増加しており、木製家具においては木の素材感を残したブラック着色も印象に残りました。
日本でも低彩度カラーのコーディネートは徐々に人気が高まっているので、ぜひインテリアの参考にしてみてください。