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2020.04.02

日本人と中国人にとっての床の違い

建築家
青山周平

B.L.U.E建築設計事務所共同主宰。広島県生まれ。東京大学大学院修了後の2005年中国へ。SAKO建築設計工社勤務、清華大学にて建築学博士号取得を経て、2014年、北京で藤井洋子とB.L.U.E建築設計事務所を設立。

http://www.b-l-u-e.net/

床は人の生活に一番近い存在

床が大事なのは、人の生活に一番近い存在だからだと思います。例えば、今、私はこの床の上に座っていますが、私と接しているのは床だけで、壁や天井は接していませんよね。つまり、床は人の体と一番近い存在なんです。
小津安二郎の映画を見ていると、アングルが低いことが分かります。彼の映画のアングルの高さは大体人が床の上に座っている目線の高さで、地面より70~80cmぐらいの位置なのですが、日本の伝統的な生活、伝統的な建物では、私たちは立ってではなく座って、この角度、この高さから空間を見ることになるのです。日本の伝統的な生活から見ても、床は人の生活と一番親密な関係を持つことが分かります。

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中国人と日本人では、床に対するメンタリティが違う

両者の間には、実は大きな違いがあります。昔は中国も、日本と同じく床に座る文化だったのですが、今は段々と椅子の生活が進展し、多くの人々が直接床に座らなくなりました。そしてそれに伴い、床の材料は徐々にタイルや石に変わりました。以前、中国の様々な一般家庭を訪問しましたが、床にはタイルや石が使われていることが多かったです。
ただ、最近は生活スタイルが変化し、徐々にフローリングを使う家庭も増えてきました。この変化は今後も進み、将来はより多くの家庭でフローリングが使われるようになると思います。

  • 什刹海乐春坊①
  • 什刹海乐春坊②

2016年 什刹海乐春坊(B.L.U.E.建築設計事務所設計)

青山周平さんの“床の記憶”

昔京都のお寺へ行った時に、冬なのでとても寒かったのですが、靴と靴下を脱いでそのお寺の床の上に座りました。するとその床面が本当に冷たくて、「私たちは床を通して建物の温度を感じとっているんだ」と思いました。その時の建物の冷たさは、特に強く私の記憶に残っていて、この経験から、床は建物やその温度を感じとれる部位だと思っています。
他にも、東京で歴史のある鍋料理屋さんに行った時のことです。その店は鳥肉専門の鍋料理屋さんで古い建物に木の床を貼っていて、お客さんがその床に座り、一人用の小さなテーブルで鍋を食べていました。ちょうど閉店の時間になった時、店員さんがそのテーブルを部屋の角に集め始めたんです。すると、皆が座って鍋を食べていた空間が一気に床面だけの空間に変わり、その時僕は「床は自由なものだ」と感じました。床は空間の中の本質的な存在で、自由な平面であり、固定的なものではない。ある時はご飯を食べる場所に、ある時は寝る場所に、ある時は皆でお酒やお茶を飲む場所になります。床は、多くの人々の様々な行動を受け入れる自由な平面なのです。これも私にとって大切な記憶の1つです。

神社
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