2019.11.15

バイオリン(表板)

音色を決める表板

 

『中学を卒業したら、イタリアのバイオリン製作学校へ行きたい』

ジブリ映画「耳をすませば」の中で、バイオリン職人を目指す天沢聖司が主人公の月島雫に言った一言です。カントリーロードをバイオリンで演奏するシーンは、覚えている方も多いのではないでしょうか?今回は、この「バイオリン」を構成する木材のうち、音色に大きく関わるボディの表板について紹介いたします。

音が響くしくみ

バイオリンは弦を振動させて音を出していますが、その振動にボディが共鳴することで、弦から出る音の響きが、より大きく美しく変化します。つまり、個々のバイオリンの音色や音量には、このボディを構成する木の材質が重要となってくるのです。ボディは大きく「表板」と「裏板」から構成されていますが、一般的に「表板」にはスプルース、「裏板」にはメープルが使われており、特に重要なのが「表板」です。

表板 ースプルースー

スプルースはマツ科の樹木で、日本名ではトウヒと呼ばれます。音響特性が良く、堅く丈夫で非常に軽いので、バイオリンの他に高級ピアノやハープなどにも使われています。マツ科と聞くと、日本庭園に生えている曲がった形を思い浮かべるかもしれませんが、スプルースは写真のようにクリスマスツリーのような形をしています。北米やヨーロッパが主な産地ですが、スプルースの中にも様々な種類があり、バイオリンに適したスプルースとなるとその地域はかなり限られてきます。特に、北イタリアのフィエンメ渓谷で、100年から200年の歳月をかけてゆっくりと成長したスプルースは、最高級のバイオリン用木材として1600年代から伝統的に利用されています。

フィエンメ渓谷

なぜ、限られた地域の材料が使われてきたのでしょうか・・・?実はバイオリンの表板には、素早く全体に振動を伝えられるよう、細かく均等な木目(年輪)を持つスプルースが厳選されています。年輪の幅は木が成長する速さによって決まりますが、時間をかけてゆっくり育った木ほど緻密な年輪を持ちます。フィエンメ渓谷では、楽器用木材を育てる為の森林が、数百年に渡りしっかり管理されていること、また、周辺の気候や環境が適していることによって、緻密な年輪が均等に揃ったスプルースが育つそうです。

余談ですが、あの銘器「ストラディバリウス」を作ったアントニオ・ストラディバリも、最良の木材を求めて北イタリアを旅したという説もあるそうで、バイオリン製作者のこだわりが伝わってきますね。

フィエンメ渓谷

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