シカモア|樹種物語 | フローリング総合研究所
Sycamore
2019.08.21
texture:シカモア
map:シカモア
名称:
シカモア
分類:
温帯広葉樹・カエデ科
産地:
ヨーロッパ中部

シカモアはカエデ科に分類され、樹高は35mほどに達します。ヨーロッパ中部、中国、日本に分布している樹種です。樹液は糖分を多く含んでおり、シロップなどに用いられ、樹皮は酸性化粧水の原料として使われるなど、多くの用途に使われてきた歴史を持ちます。また様々な環境に適応することができることから、森林再生の際のパイオニア種として用いられています。

天然木ならではの趣を与えるキャラクター

  • カーリー杢(縮み杢)

  • ピンノット

  • 照りの表情

  • 繊細でやさしい木目の表情

  • 材色の濃淡

ストラディバリウス

イタリアのバイオリン職人アントニオ・ストラディバリが作った名器「ストラディバリウス」。300年以上も昔に作られたにも関わらず、現代の科学をもってしてもその製作工程を解明することができないことから、「神秘の楽器」と称されています。
一般に、バイオリンの表板にはスプルーストウヒという柔らかい木が、裏板にはカエデのように硬い木が好まれます。ストラディバリウスの裏板に使われているのは、カエデの仲間のなかでも美しいカーリー杢をもつ最高級のシカモア材です。
長い間、聞く人をほれぼれさせる音色の秘密はニスにあると考えられていましたが、米コロンビア大学の気象学者たちが「均一な木目が音質に影響している」という新説を発表しました。アントニオ・ストラディバリがバイオリンを作っていた頃、欧州一帯を「小氷河期」という寒冷な気候が襲い、木の成長が遅れたことから密度の高い特別な材が手に入ったというのです。
ストラディバリウスの音色は、天からの恵みだったのかもしれません。

新月の木

オーストリアには「真冬の新月に伐採した木材は、そのほかの時期に伐採した材の10倍長持ちする」という伝説があります。ストラディバリウスに使われているシカモアも、真冬の新月期に伐られたものなのだそう。近年この伝説が科学的に検証され、新月期の樹木の細胞にはでんぷん質が少ないことが発見されました。そのため腐りにくく虫もつきにくく、さらには狂いも生じにくいということが立証されています。
ちなみに日本の奈良吉野にも「闇切り」という同じような伝説があり、世界最古の木造建築である法隆寺にも新月の木が使われているとのこと。洋の東西を問わず、木に親しむ人はその神秘的な特性をよく把握していたのでしょうね。

風から家を守る木

シカモアは過酷な環境でも生育することができるため、ヨーロッパやニュージーランドでは、都市部の街路樹としてよく植えられています。大気汚染だけでなく、塩害に強いのも特徴。多くの木は育つことのできない海辺でも、のびのびと成長して葉を茂らせます。その特性を生かして、沿岸地域では潮風から家を守るために植えられることも多いのだそう。そんなシカモアで作られた床には、暮らしをしっかりと支えてくれそうな安心感があると思いませんか?

本物の印「カーリー杢」

「カーリー杢」とは、シワが寄って波のように縮んで見える木目のこと。樹齢を重ねた幹にコブや凹凸が生じ、木目が乱れることで現れます。シカモアと同じカエデ科のハードメイプルにも見られる特徴で、その美しい模様が弦楽器の甲板に重用されるため、「バイオリン杢」とも呼ばれています。樹種は異なりますが、よく似た木目をもっているのが日本のトチノキ。なかでも岐阜県産のものにはシカモアに近い「カーリー杢」が見られます。

細胞内部の光の反射(イメージ図)

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