建物の中で最も負荷がかかる過酷な場所。日々様々な傷にさらされ、摩耗し続けている場所。それが「床」です。ただ、傷に強いからといって単に「硬い」床を選べばよいというわけではありません。美しい空間をできるだけ長く保つにはどんな傷が発生するのかを知り、加えて床の耐久性を客観的に判断する性能指標の理解が求められます。
本記事ではJAS/JIS規格に基づく耐摩耗・耐傷試験や、表面硬度を紹介して床の構造による耐久性の違いを網羅。床材選びのポイントを建築士の視点で解説します。
1. フローリングに発生する「3種類の傷」と原因

床の美観を損なう傷は、その原因で3つに大別できます。ここでは、それぞれの定義と原因に加えて耐性等を測るための客観的な指標をご紹介します。この指標は素材の性能を確認する際の重要な目安となります。
1-1.引っかき傷
鍵やペットの爪などが表面を鋭く切り裂くことで生じる損傷です。傷の深さを決定づけるのは主に塗膜の「硬さ」で、JIS規格の「鉛筆硬度試験」などによって評価されます。このタイプの傷は硬度が不足していると、木材繊維まで達するほど深いものになりやすく、美観を大きく損なう要因となります。
1-2.凹み傷
重い家具の設置や硬い物の落下による基材(下地)そのものの変形です。凹みに対しての耐性はJIS規格の「鋼球落下試験」等で評価されます。床は表面が硬くても基材が柔らかいと凹みも深くなるため、選ぶ際は基材自体の剛性をチェックする必要があります。
1-3.表面の摩耗
土足歩行の摩擦や椅子などの家具の移動で塗膜が削れて表面がすり減っていく損傷です。JAS規格の「フローリング摩耗試験」は、この摩擦に対する強さを数値化したもので、特に土足環境での耐久性に関する重要な指標となります。
2. 【表面材・構造別】フローリングの耐傷性・耐久性の特徴

フローリングはその構造によって傷に対する「耐久性」の性質が異なります。床材の特徴を理解すると、意匠性と耐久性のバランスをどこに置くか決めやすくなり、用途に応じたフローリングを選ぶことができます。
2-1.シートフローリング
木目を印刷した樹脂シートを合板などの基材に貼ったものです。品質が均一で表面硬度も安定していますが、シートの層が非常に薄いため、傷が深いと下の基材が見えてしまいます。一度基材が露出してしまうと、天然木のようなリペアが難しい側面があります。
2-2.突き板フローリング
合板などの基材に天然木を薄くスライスした「突き板」を貼って高性能な塗装で仕上げたものです。突き板のフローリングは天然木の風合いを生かしつつ、複数の素材を貼り合わせた基材構成により、耐凹み傷性を確保。さらに寸法安定性も高く、バランスの取れた選択肢と言えます。
2-3.挽き板フローリング
合板などの基材に厚みのある天然木を貼り合わせたフローリングです。無垢材のような重厚感と高い寸法安定性を兼ね備え、突き板に比べて化粧材に厚みがあるため、傷が入った際にも化粧材の意匠性を維持しやすいことが特徴です。
さらに、基材構成や塗装仕様などの工夫により、不特定多数が利用する環境でも一定の耐傷性・耐久性を発揮する製品も開発されています。
2-4. 無垢フローリング
単一の木材からなる無垢フローリングは、樹種本来の硬度が耐久性に直結します。木そのものの風合いや質感を楽しめる一方、オイル仕上げや樹種によっては、引っかき傷や擦り傷、凹みが生じやすい傾向にあります。また、温湿環境の変化で「反り」や「隙間」が発生しやすい点にも注意が必要です。こうした変化を「味」や「風合い」として許容できる空間設計に適した素材と言えます。
このように、フローリングは構造によって固有の強みと弱点を持っています。加えて不特定多数が利用する施設や非住宅環境では、一般住宅と異なる土足対応などのスペックが求められます。次章では施設タイプ別に優先すべき具体的な性能を詳しく解説します。
3.施設タイプ別・優先すべき耐傷スペック

オフィスや店舗では、メンテナンスのしやすさと長期的な耐久性が重視されます。運営コストへの影響を考慮して施設特有の「歩行量」や、「荷重の種類」に特化した専用スペックを選定しましょう。
3-1.土足施設全般:表面塗膜の耐久性
不特定多数の人が往来する店舗などの施設においては、砂利の持ち込みや頻繁な歩行による摩耗が避けられません。非住宅用途に配慮した高耐久塗装床材の選定が、長期的な美観維持とメンテナンスコストの抑制に直結します。
3-2.オフィス:キャスター耐性・薄型設計
キャスターが方向転換する時にかかる旋回荷重は、床表面と基材の両方に高い負荷をかけます。そのため、オフィスの床材には繰り返される「点」の圧力に耐える強靭な構造が必要です。「薄型設計」なら既存床からの将来的なリニューアルも、段差調整がしやすくなります。
3-3.高齢者施設:車椅子対応
高齢者施設では車椅子の重量や、ねじれ負荷に耐えうる剛性の確保が必須です。併せて万が一の転倒時に衝撃を緩和できることや、歩行を妨げない適切な防滑性など、身体的ケアとハードの耐久性を、高次元で統合する視点が求められます。
3-4.宿泊施設:土足耐性 + 防音性
ホテル・宿泊施設ではキャリーバッグの走行や、土足歩行に耐える表面強度が必要となります。また、客室に不可欠な「静粛性」の確保が空間の質を大きく左右します。階下に響く音を抑える遮音性能の維持を可能にする一方で、摩耗も防ぐ高機能な床材が上質なホスピタリティを支えます。
4. 朝日ウッドテックの技術:高耐久フローリングの機能性
木材の美しさを知り尽くした朝日ウッドテックでは、その風合いの維持と過酷な環境に耐えうる独自の技術を追求してきました。多くの現場で選ばれ続ける性能の裏付けを、製品のラインナップとともに解説します。
4-1.現場の課題を解決する「メッセージシリーズ」

大阪・関西万博2025 イタリアパビリオン
土足対応フローリング「MESSAGE Hard挽き板」採用事例
不特定多数の人が利用する公共・商業施設の床には過酷な負荷がかかります。朝日ウッドテックの非住宅用フローリング「メッセージシリーズ」は、土足摩耗や集中荷重といった現場特有の課題に対し、独自の塗膜技術と高密度基材で応えるプロユースの床材を展開しています。
4-2.独自の土足利用対応
「メッセージハード」「メッセージオフィス」には、過酷な摩耗試験をクリアした硬く粘り強い特殊塗膜を採用。土足による激しい往来にも耐え抜く表面強度を有しています。
4-3.凹みに強い高密度基材の採用
●「メッセージホテル」の特性
●「メッセージケア」の特性
重量家具の設置や移動荷重に耐える高密度な基材構造を採用することにより、構造面からのアプローチで損傷を最小限に抑える確かな信頼性を確保しています。「メッセージホテル」では事務椅子によるキャスター走行試験、「メッセージケア」では車椅子の旋回・走行試験を実施し、現場の過酷な負荷に対する耐性が客観的に検証されています。
4-4.優れたメンテナンス性
「メッセージシリーズ」はワックスフリーの仕様に加え、優れた耐水性と防汚性を備えた製品でもあります。食事の食べこぼしや水はね、薬品等の汚れが染み込みにくく、日々の清掃は拭き取りだけで完結。維持管理の手間を減らして長期的なLCC(ライフサイクルコスト)の低減に大きく寄与します。
4-5.大阪万博で300万人が歩いた床

2025年大阪・関西万博 ドイツパビリオン
土足対応フローリング「MESSAGE Order挽き板」採用事例
「メッセージシリーズ」はこれらの機能が認められ、2025年大阪・関西万博のパビリオンに採用されました。数百万人規模の歩行に耐える「公共建築の基盤」として確かな実績を積み重ねています。
関連製品
土足施設向け:メッセージハード
オフィス向け:メッセージオフィス
高齢者施設向け:メッセージケア
宿泊施設向け:メッセージホテル
オーダーメイド 土足用フローリング
5. まとめ|用途に合わせた「耐傷スペック」の最適化
「傷に対する強さ」は単に素材の硬さで決まるわけではありません。そして、フローリング選びにどの施設でも当てはまる「たったひとつの正解」はありません。大切なのは10年後、20年後の運営の姿を想像し、起こりうるリスクに対応できるスペックを見極めることです。
その床材は凹みや擦れに強いのか。どの程度の耐久性・耐摩耗性があるのか。客観的な指標を「安心の目安」に、長く愛せる環境づくりを、足元から考えてみてはいかがでしょうか。
記事監修:辻 久(つじ ひさし)

一級建築士。INA新建築研究所を経て独立し、建築設計due代表を務める。現在まで20年以上、一級建築士事務所を運営し、住宅、店舗、集合住宅、医療福祉施設など多数の設計監理実績がある。




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