ミラノデザインウィーク2026レポート
❝素材の時代❞へ。
ミラノデザインウィーク2026 に見る、上質な空間価値の変化
今年のミラノで強く感じられたのは、華やかさや装飾性で魅せるデザインから、素材そのものの質感や背景、時間の価値を丁寧に伝えるデザインへの移行でした。
サローネのテーマは「A Matter of Salone」。“Matter”には「素材」と「本質」という意味があります。会場では、木、石、有機的なモチーフなどのマテリアルを主役にしたビジュアルが展開されていました。
色や形のインパクトよりも、素材、余白、静けさ、経年の価値をどう空間に落とし込むか。ミラノで見えてきた上質な空間価値の変化を、コーディネートと木質トレンドの視点から読み解きます。
コーディネイト
色を抑え、素材で奥行きをつくる。
コーディネートの傾向としては、昨年から続く「素材を活かした低彩度」と「黒を効かせたコントラスト」が継続。そのうえで今年は、グレーやベージュを基調とした低彩度の空間に、ブラウン系を穏やかに重ねる配色がより目立っていました。木、石、金属、ファブリックなどの異素材を組み合わせながらも、色の主張は抑え、質感の違いで空間に奥行きをつくる表現が見られます。また、ブラウン系、テラコッタ系、バーガンディ系、グリーン系などの有彩色も、鮮やかに主張するのではなく、彩度を抑えたトーンで空間になじませる使い方が印象的でした。ラグジュアリーは、“見て分かる高級感”から、“感じる上質感”へと変化しているように感じられます。
|素材を生かした低彩度
色数を抑え、石調素材や木質、ラタン、ファブリック、ラグなどの素材感で、空間をやわらかくまとめるコーディネート。

Gervasoni 
FLEXFORM
|黒を効かせたコントラスト
黒を主役として強く見せるのではなく、低彩度の空間を引き締めるアクセントとして使う表現。

ARMANI/CASA 
Poliform
|低彩度+ブラウン系
グレーやベージュを基調に、ブラウン系を穏やかに重ねることで、落ち着きのある空間に。

FLEXFORM 
Porada
|注目カラーの傾向
グレーやベージュを中心とした低彩度の空間が主流となる中、テラコッタ系、バーガンディ系、グリーン系など、彩度を抑えた有彩色も目立った。鮮やかに主張するのではなく、空間全体になじみながら、温度感や深み、自然感をつくっている。
ウッディトレンド

木質表現は、主張から調和へ。
木質トレンドでは、オーク、ウォルナット、アッシュを中心に、低艶で自然な質感を引き出す仕上げが定着していました。無塗装に近いインビジブル仕上げや、艶を抑えたマットな質感は、木目の力強さを穏やかに見せ、素材そのものの質感を引き立てています。
また、低彩度着色では、従来から見られたライトグレーに加え、上質なミッドグレーやブラウン系の表現が広がっていました。柔らかな動きのある柾目に低彩度ブラウンを重ねるなど、木目を活かしながら空間になじませる中間明度の表現が充実している点も印象的です。
さらに、柾目や追い柾、ブックマッチ、スリップマッチなど、突板や木目のレイアウトによって上質感を整える見せ方も見られました。木を強く主張させるのではなく、仕上げ、色、木目の整え方によって空間全体と調和させる。木質は、空間の主役でありながら、より自然に溶け込む存在へと変化しています。
|インビジブル・マット仕上げの定着
|低彩度着色・中明度の広がり
|突板・木目レイアウトの上質化
写真で見る、素材と空間の気になるトピックス
|ラウンドシェイプの広がり
コーナーを大きく丸めた形状や、やわらかな曲線を持つディテールが継続。低彩度の空間に、包まれるような心地よさを加えている。

角を大きく丸めた収納家具。低艶の木質感とやわらかな曲線が、空間に穏やかな上質感を与えている。
|キッチンの家具化
EuroCucina開催年となった今年、キッチンをリビングと一体化する家具のように見せる流れがより明確に。木質、石材、金属を組み合わせた、空間性の高い表現が見られた。

木質のラウンドカウンターに石材を組み合わせたキッチン。空間の中心となる家具のような存在感を放っている。
|素材に宿る時間の表現
古木や再生材など、素材が重ねてきた時間や背景を、プロダクトの価値として伝える展示が印象的でした。サステナブルであることに加え、素材が持つ物語をどう魅力に変えるかが問われています。

古民家で使われてきた古木を展示。傷や色の変化を隠さず、木が重ねてきた時間そのものを価値として見せている。
|異素材の調和
木、石、金属、レザー、ファブリックなど、異なる素材を組み合わせながらも、強いコントラストではなく、穏やかに響き合わせる表現が目立った。

異なる素材を低彩度のトーンで構成。素材同士を穏やかに響き合わせるマテリアルミックスが印象的。
ミラノの街で、思わず足を止めた展示たち
moooi|25年の歩みを、巨大なポートレートで見せる
moooiは、25周年を記念した展示を開催。歴代のデザイナーたちの巨大なポートレートが会場を彩り、ブランドの歩みと創造の歴史を空間で見せていました。

Gucci|“見る”だけでなく、参加するブランド体験
Gucciの展示では、来場者がコインを入れてドリンクを受け取る自販機が登場。高級ブランドでありながら遊び心があり、体験として記憶に残る展示でした。
MONCLER|巨大なタコが、10 Corso Comoを占領
MONCLERの展示では、ミラノの人気スポット「10 Corso Como」に巨大なタコが出現。建物を覆う大胆な演出で、ブランドの世界観を強く印象づけていました。

川島織物セルコン|織物で表現する、時間の層
「織の地層」をテーマに、地層の堆積と織物の積層を重ねた展示。素材の質感や光の陰影を通じて、織物に宿る時間を感じさせる空間でした。


























