2021.10.25
癒し香り

木の香りによる効果

 

森の中や木を用いた空間で感じる、木のいい香り。木の種類によってさまざまなその香りは、人にとって多くの有益な効果をもたらします。木が香る理由や、どんな効果があるのかについてご紹介します

木の香りは自らを守る力

木は害虫や微生物など外敵に襲われても、その場から逃げることができません。そこで、外敵を寄せ付けないために、また傷ついたとき病原菌の感染を防ぐために、自ら「フィトンチッド」という揮発性の物質を放出することで身を守っています。

「フィトンチッド」とは、フィトン=「植物」、チッド=「殺す能力」を意味するロシア語の2つの言葉からなる造語で、人は目に見えないこの物質を「香り」として感じています。フィトンチッドは、一つの成分を指して使われる言葉ではなく、植物から放出される抗菌・殺菌、殺虫作用などがある成分全体の総称です。その成分は多岐にわたり、樹木の種類によって異なります。この成分の差が、スギやヒノキといった樹種の香りの特性となります。

フィトンチッドのさまざまな効果

木の香りフィトンチッドの効果の代表的なものとして、除菌・抗菌、消臭、リラックス効果、抗酸化などが確認されています。

① 除菌・抗菌

フィトンチッド発見のきっかけにもなった殺菌(除菌・抗菌)作用ですが、菌と一言で言っても、健康に悪影響を与える病原菌もあれば、生きていくために必要不可欠な常在菌、善玉菌などの非病原菌もあります。

例えば、フィトンチッドのひとつである「ヒノキチオール」は、カビや木材腐朽菌のほか、病原菌を抑える力もあります。院内感染の原因菌であるMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)や、食中毒の猛威を奮う大腸菌O157等への抗菌作用を持っていることが明らかになり、医薬部外品や化粧品、歯磨きなどにも利用されています。

②酸化防止効果(防腐効果)

魚介類や肉類など生ものはもちろん、食品はそのまま放置しておくと「酸化」されて腐敗してしまいます。フィトンチッドには腐敗を遅らせる働き(抗酸化作用)があり、食品の鮮度を保つことに役立っています。

例えば、お寿司屋さんのショーケースの中にはヒノキやサワラといった針葉樹の葉とともに寿司ネタが保存されています。ネタの間には、ササの葉やシソの葉などを置いて、見た目の美しさとともに鮮度保持にも役立っています。

昔は、おにぎりを木の葉で包み、木のお弁当箱もよく使われていました。これは、フィトンチッドの抗菌・防腐効果を利用しているものです。今でも、清潔に保つ必要があるまな板などのキッチン用品や食器なども木製のものをよく見かけますね。

③消臭効果

フィトンチッドは、悪臭を放つ成分に付着して分解し、無害化してしまいます。森に行くと「空気がおいしい」「新鮮で澄んでいる」と感じて深呼吸することはありませんか?本来なら動物の死骸や排泄物、腐敗植物などの臭気が漂っているはずの森の中で、それらを感じさせないのは、フィトンチッドの消臭効果が発揮され、空気を浄化してくれているからです。

スギ等のオガ屑などは畜舎の敷料(家畜の寝床に敷くもの)として糞尿の消臭に利用されています。また、レッドシダー製のハンガーやブロックがよく売られているのは、靴箱やタンス、クローゼット等へ木が持つ消臭効果を活用しているからです。

④リラックス効果

さまざまな実験や研究が行われるなかで、フィトンチッドが医学的に心身を深いリラクゼーションに導く効果が明らかになってきています。農林水産省が行った実験ではフィトンチッドを体内に取り入れることで、「ストレスホルモンの減少」「血圧・心拍数の低下」や「免疫力の上昇」「抗がんタンパク質の増加」も認められました。ヒトの副交感神経を刺激して精神を安定させ、解放感、疲労回復、ストレスの解消などをもたらします。

加えて、家を建てる時にヒバやヒノキ、スギなどの木材を使うのはそれらの木が放出するフィトンチッドにシロアリやダニ、蚊などを寄せ付けない効果もあるからです。

植物が生み出す香りは、外敵となる動物や細菌類などに対しては武器として働きますが、幸いにもわたしたち人にとっては無害な天然物質で、抗菌や消臭、リラックス効果といった様々なプラス効果をもたらしてくれます。木造住宅では柱などの構造材に木材を使用しますが、インテリアの一つとしてスギやヒノキを使った壁材などをお部屋の中に取り入れてみるのはいかがでしょうか?

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