心材・辺材の役割 | フローリング総合研究所
2021.04.30
樹冠心材・辺材年輪

心材・辺材の役割

 

太く育った丸太の木口面を見ると、中央部とその周囲で色の違いがみられます。見た目の違いだけでなく、他にもどのような違いがあるのかご紹介します。

「心材」と「辺材」

丸太の中央部の濃い色をした部分を「心材(しんざい)、赤身」 、その周囲の淡い色をした部分を「辺材(へんざい)、白太」 といいます。心材と辺材の色は樹種により様々で、中には、心材と辺材が人間の目では区別がつかない樹種もあります。
木が生きているときも、木材として利用するときも、 役割が異なります。心材と辺材がどのように形成され、どのような役割を果たしているのか、幹の成長過程を追いながら説明していきます。

丸太の断面

幹はどのように太くなる?

木口面から見える組織をもう少し細かく分類すると、中心から髄、心材、辺材、形成層、樹皮(内樹皮、外樹皮)と分けられます。

幹は、樹皮のすぐ内側にある形成層から細胞分裂し、肥大成長しています。つまり、幹の周囲に新しい細胞を積みかさねていくことで、太くなっているのです。

木の断面

年輪の形成

形成層の活動は、生育環境により活発さが異なります。日本のような四季のある地域の樹種は、春から夏にかけて大きい細胞、夏の後半に小さい細胞がつくられます。こうした生育時期の違いから、幅が広くて淡い部分は早材(春材)、幅の狭い濃い部分は晩材(夏材)と呼び分けられます。この濃淡の差が、年輪として線を描いているように見えるのです。

  • 木材の断面
    木材の断面写真
  • 木材の年輪
    年輪の拡大写真

辺材が死んで心材になる

人間の細胞は日々少しずつ入れ替わっていると言われますが、樹木の幹部分は、新しい細胞が周囲に積み重なる一方で、古い細胞は入れ替わることなく中心側に残ります。細胞は不死身ではありませんから、中心である髄に近い、古い細胞から順に死んでいくことになります。死にゆく細胞内には、フェノール類をはじめとした着色物質がつくられます。
つまり、生きている辺材部分の細胞が死んで着色物質が生成されることで、心材として目に見えるようになるのです。ただ、心材は死んでいるからといって役に立っていないわけではありません。木が生きていくための役割を、心材と辺材、それぞれで担っています。

樹木は年数を経て、高く成長していきます。高くなるにつれ、樹体を支える太い柱が必要になります。心材部分は、生命活動こそしていないものの、樹木の柱としての役割を担い続けます。生命活動を担っているのは外側の辺材であり、地中の水を根から樹冠へ運ぶときの通り道や、葉でつくられた栄養分の貯蔵庫としての役割を持っています。

樹木

木が生きていたときの役割は、木材の性能面でも、心材・辺材の特徴としてあらわれます。
心材は、心材成分の影響で耐久性や強度が高いというメリットがあり、柱などの構造材としてよく使われます。一方で木材に特別な加工を施す際に心材成分が障害となることがあり、例えばパルプ加工や、薬液注入処理を行う場合には、心材は適さないと言われます。
辺材は、心材とは逆の性質を持ちます。栄養分が含まれ、菌や虫による被害を受けやすいデメリットがある一方で、パルプ加工や薬液注入処理を行う材料としては、適しています。

このように私たち人間は、「心材(赤身)」と「辺材(白太)」を用途に応じて使い分けてきたのです。フローリングや家具などの表面に使用する化粧材として従来多くの樹種では心材のみが使われてきましたが、最近では辺材部分をデザインに取り入れているものが増えてきました。天然木の素材感をより楽しみたいという方は、辺材が多く入っているブラックウォルナットやオークなどのフローリングを選んでみてはいかがでしょうか。

  • ブラックウォルナットのフローリング
    ブラックウォルナットのフローリング
  • オークのフローリング
    オークのフローリング
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