木材の異方性と強度 | フローリング総合研究所
2021.06.25
板目・柾目異方性強度乾燥

木材の異方性と強度

 

木材が反っているのを見たことがありますか?木材の特徴のひとつに、湿度が高い時には湿気を吸い込んで伸び、乾燥している時には湿気を吐き出して縮むという性質があります。自然素材であるが故の特徴で、木材を活用する上では上手に付き合っていかなければなりません。1本の丸太でも使う場所によってどのように変化が異なるのか、樹種によってどれほど強さが異なるのか、などご説明します。

木材はなぜ変形するの?

木材は、周囲の温湿度変化に応じて吸湿と放湿を行い、それにともなって寸法も変わります。しかし、寸法の変化量は、木材の切り出された部位や方向によって大きく異なります。木材にはこの「異方性」と呼ばれる性質があるため、様々な変形が生じます。

木材の変形

木材の異方性とは?

木材の異方性

木材の特性は3つの方向で説明されます。接線方向(年輪に接する方向)、半径方向(中心から外に向かう方向)、繊維方向(幹の方向)の3つです。方向によって大きく異なるのが収縮の割合で、接線方向を10とすると、半径方向がおよそ5、繊維方向がおよそ1とされています。また、収縮割合以外にも、強度においても異方性が関係しています。繊維方向の木材の強度は、半径方向や接線方向の木材よりもはるかに高くなります。

木材の強度の違いは?

一言に「強度」といっても、そこには様々な基準があります。フローリングでよく生じる問題に凹みがありますが、凹みやすさの違いは「硬度」という言葉で表されます。

木材は細胞の隙間に空気を含んでおり、樹種や生育環境によって含む空気の割合が異なります。空気が少ないほど木材の硬さが増して凹みにくく、つまり「硬度」が高くなります。

  • 木材の衝撃吸収性の仕組み
  • ヒノキの三断面写真

木材はフローリングが衝撃を受けると、上左図のように、力を受けた部分の木材組織(中空の細胞)が局所的に凹んで衝撃を緩和します。もともと細胞で構成された生物材料=木材ならではの機能と言えます。
参考文献:佐道 健「木のメカニズム」1995養賢堂

一般的に広葉樹(メイプルやウォルナット)の方が針葉樹(スギやヒノキ)よりも硬い傾向にあります。木材の「硬度」は人間にとってちょうどよく、歩きやすく、転んでぶつかっても木材が衝撃を和らげてくれます。下の画像は、ダイニングテーブルの高さを想定した75cmから500gの鋼球を落とした時のフローリングの凹み傷を比較したものです。

  • 針葉樹:ヒノキ
  • 広葉樹:メイプル

次に、「どこまでたわみに耐えられるか」という尺度があります。木材に荷重をかけるとたわみますが、荷重を除くと元に戻ります。荷重が限界を超えると木材は壊れてしまいますが、日常生活でフローリングを使用する際にはそこまでの荷重はかかりません。また、木材の種類や材質に加えて厚みも耐えられる荷重に関係しており、フローリングは日常生活で問題のない厚みに設定されています。

たわみ変形による衝撃の緩和イメージ

木材は軽い割には強い材料で、しかも力が加わると適度に変形する性質もあわせ持っています。上図のように根太などを適切な間隔で配置した床組みであれば、木材がバネのようにたわんで戻るので、飛んだり跳ねたりの衝撃をも緩和してくれます。

以上のように、木材には「異方性」と呼ばれる収縮割合の違いや、方向によって強度が異なるという性質があります。フローリングは木材の「異方性」や「強度」を考慮されて製造されており、日常生活にちょうどよい「硬度」であり、問題のない「厚み」となっています。また、無垢や挽き板フローリングに使用される木材は木の種類によって傷のつきにくさも変わってくるのです。

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