COLUMN #60
動物医療技術師 石川 美代子

ペット用フローリングは犬や猫との暮らしに配慮された床材です。人と動物は同じ家の中に住んでいても暮らし方が異なるため、より安全で快適な日々を過ごすためには、お互いにとって最適な床環境を整えることが大切です。この記事では、一般的な住宅によく使用される床材・フローリングの特徴と課題を解説します。ペット対応フローリングの魅力についても紹介するので、ぜひ愛犬との生活に役立ててくださいね。
私たちが日常的に歩いているフローリングですが、実は犬や猫などのペットにとっては、その表面の滑らかさが大きなリスクになることをご存知でしょうか。人間は靴を履いたり、足裏の接地面積が広かったりするため滑りを感じにくいですが、ペットにとっては大きな負担につながる場合があります。
一般的な塗装やワックスがけが施されたフローリングは、人間にとっての掃除のしやすさや光沢を優先しています。しかし、爪を立てて地面を蹴ることで推進力を得る犬にとって、この表面はあまりに滑りすぎます。 例えるなら、私たちは常に「氷の上」を歩かされているような状態です。踏ん張りがきかないため、歩くたびに足が外側に開き、関節や筋肉に過度な緊張を強いています。特にダッシュや急ブレーキ、飛び跳ねた後の着地時に足が滑ることは、ケガや足腰への負担につながる可能性があります。
天然木をはじめ、通常のフローリングには「滑り」の問題があります。フローリングが愛犬の足腰に負担をかけるのではという不安を感じ、カーペットやラグを敷く人も少なくありません。 特に室内犬は生活の大部分を部屋で過ごすため、床の滑り対策は必要不可欠といってよいでしょう。
滑る床を放置することで懸念されるのが、以下の代表的な疾患です。
・パテラ(膝蓋骨脱臼):特にトイプードルやチワワなどの小型犬に多い疾患です。膝の皿が本来の位置からずれてしまい、痛みや歩行困難を引き起こします。
・椎間板ヘルニア:ダックスフンドやコーギーなど胴長短足の犬種に多く見られます。滑る床で腰をひねったり、不自然な体勢で踏ん張ったりすることは大きなトリガーとなります。
「猫は身体能力が高いから大丈夫」と思われがちですが、それは誤解です。猫は高い場所から飛び降りる習性がありますが、着地地点の床が滑りやすいと、関節や靭帯に大きな衝撃がかかります。 また、高齢猫になると足腰の筋力が衰え、踏ん張りがきかなくなります。爪を隠して歩く猫であっても、滑りやすい床では歩行が不安定になり、活動量の低下やストレスの原因にもなるのです。

ペット対応フローリングは、滑りにくい塗料でコーティングしたり、表面に凹凸をつけたりする工夫が施されており、一般的なフローリングより犬が滑りにくいのが特徴です。
選定の基準として重要なのが「滑り抵抗係数(C.S.R値)」です。ペットにとって最適な滑り抵抗値が確保されているかを確認しましょう。単に「ザラザラしている」だけでなく、犬の肉球がしっかりとグリップしながらも、人が歩いた際につんのめるような強すぎる抵抗感がないバランスが求められます。
ペットは人間よりも低い位置で生活しているため、床の温度変化に非常に敏感です。冬場の寒さ対策としてフローリング+床暖房を導入している、あるいは検討している場合は「床暖房対応」の表記を確認しましょう。
非対応のフローリングを床暖房の上に使用するとフローリングならではの反りや隙間、表面性能の低下など、さまざまな不具合につながる場合があります。
デザイン性と機能性は理想的な空間を作るためにどちらも重要です。優先順位がつけられない場合、どのように対応すればよいのでしょうか。フローリングは美しい木目や自然な風合いが魅力的な床材で、意匠性の高さや耐久性、洗練された空間演出が期待できます。
他の床材と比較してみましょう。
・クッションフロア:安価で耐水性は高いですが、経年劣化で安っぽく見えたり、大型犬の爪で破れたりすることがあります。
・ジョイントマット:部分的な取り替えが可能ですが、隙間に汚れが溜まりやすく、リビング全体のインテリアを損なう傾向にあります。
・タイル:耐久性は抜群ですが、冬場に冷え込みやすく、硬すぎてペットの関節に負担をかける場合があります。
天然木のフローリングは一つ一つの表情が異なり、時間が経つほどに味わい深い魅力を感じさせてくれます。木目の美しさはもちろんのこと、サラッとした心地良い足触りも人気がある理由のひとつ。湿度が高い日には湿気を吸い込み、湿度が低い日には湿気を吐き出すという調湿作用も、温暖湿潤気候な日本に最適な機能といえます。
天然木は適度な弾力性があるため、コンクリートやタイルに比べてペットの体への衝撃を和らげる傾向もあります。機能性だけでなく、家族が集まるリビングにふさわしい「上質な空間」を作れるのは、やはり天然木ならではの特権です。
既存の床に塗る「滑り止めコーティング」という選択肢もありますが、数年おきに塗り直しが必要な場合が多く、長期的にはコストがかさみます。また、コーティング剤によっては特有のテカリが出てしまい、木の質感が損なわれることも。 一方、最初からペット専用に開発されたフローリングは、基材自体の強度や塗装の定着力が計算されているため、トータルバランスで勝ります。

当社では、美しい住まいと愛犬へのやさしさを両立したフローリングを実現させるため、塗料メーカーと何度も協議し、数年にわたって試作を重ねました。その結果、樹脂を柔らかくした特殊な塗装を天然木に施すことで、グリップ力を生み出す本物志向の小型犬用フローリング「Live Natural for Dog」が完成。天然木の温もりと滑りにくさを両立した重厚感があって美しいフローリングに仕上がりました。
理想の暮らしを叶えるうえで大切なのは、「見栄えと機能の両立」です。滑りにくさを生む最もシンプルな方法は塗装面に凹凸をつけることですが、これを実際にやってしまうと手触りがザラつき、天然木の良さが失われてしまいます。
「Live Natural for Dog」には特殊な樹脂を使った塗料を使用しており、一般の天然木フローリングと比較しても見劣りしない美しさがあります。また、滑りにくさに関しては数値だけでなく、実際の感覚も重視してテストを実施。本物志向のオーナー様にもご満足頂ける仕上がりとなっています。
ペットとの生活で気になるのが、目に見えない菌やニオイの問題です。「Live Natural for Dog」は、ただ滑りにくいだけではありません。光触媒による抗ウイルス・抗菌機能を備えており、床に付着したウイルスや菌を分解・抑制します。そのため、小さなお子様がいるご家庭でも安心してご使用いただけます。
人が暮らしに求める高級感や美しさもしっかり確保する。それが、人と犬が共に暮らす住まいづくりに大切な視点といえます。 通常の塗装でコーティングを施した場合、違和感のあるテカリが出て美観が損なわれます。犬にとって十分な滑りにくさを実現し、木の温もりで上質な空間を作ることが、ペット用フローリングに課せられた役割です。
■当社のペット対応フローリング「Live Natural for Dog」の開発秘話はこちら
・天然木と共に実現する、人と犬の快適な暮らしとは。
■愛犬のために気をつけるべき病気や理想の家づくりについて、詳しくはこちらの資料をご覧ください。
「愛犬と暮らす家づくりのポイント」

■小型犬の好発疾患「膝蓋骨脱臼」については、以下の記事で詳しく解説しています。
・パテラとは?膝蓋骨脱臼に注意!愛犬の寿命を延ばす、フローリングを選ぼう
■胴長短足の犬に多い「椎間板ヘルニア」については、以下の記事で詳しく解説しています。
・犬とフローリングにまつわる課題とは?愛犬をヘルニアから守ろう!
ペットの毛は静電気でフローリングに吸着しやすいため、こまめな掃除機がけが基本です。ただし、ヘッドの回転ブラシが固いものは床を傷つける恐れがあるため、優しくかけるのがポイント。 また、普段のお手入れは乾拭きが推奨されます。水分を嫌う天然木にとって、過度な水拭きは反りやひび割れの原因になるため、汚れが気になるときだけ固く絞った布で拭くようにしましょう。
もし粗相をしてしまったら、一刻も早く吸い取ることが肝心です。放置するとアンモニア成分が塗装にダメージを与え、シミや変色の原因になります。 中性洗剤を薄めた液で拭き取った後、必ず乾拭きをして水分を完全に除去してください。消臭スプレーを直接床に大量に噴霧するのは避け、布に含ませてから拭くのが床を長持ちさせるコツです。
床側の対策だけでなく、ペット側のメンテナンスも併用しましょう。
・足裏の毛のカット:肉球の周りの毛が伸びていると、どんなに良いフローリングでも滑ってしまいます。
・爪切り:長すぎる爪は床を傷つけるだけでなく、ペットの歩行姿勢を狂わせます。
・肉球クリーム:乾燥して硬くなった肉球はグリップ力が落ちます。適度に保湿してあげることで、フローリングとの密着性が高まります。
フローリングは美しく機能的な床材ですが、犬と一緒に暮らす生活では、「滑り」を考慮する必要があります。ペット対応フローリングはペットが歩きやすいよう、様々な工夫が施されており、足腰の負担にもなりにくいのが特徴です。 しかしその一方、美観や触り心地は満足できないものも多く、理想的な雰囲気とは異なるものも珍しくありません。
「どちらかを諦める」のではなく、どちらも追求する。それが、大切な家族であるペットと私たちが、この先10年、20年と一緒に笑って暮らすための最良の選択です。
天然木の魅力あふれるペット用フローリングで、愛犬とのより豊かで快適な生活を実現させてください。

石川 美代子
犬の管理栄養士、動物ケアスタッフ、動物医療技術師、犬の美容師(トリマー)。卒業後は動物看護師として動物病院に勤務し看護業務に従事。現在はwebライターとして主にペット関連記事の執筆、ペット用品・記事の監修などを行う。